「長安ラッパー李白」/大恵和美(編)

 長安ラッパー李白
 ◎
 唐代を舞台としたSF短編集。
 表題作は中国語からの翻訳に感心。
 「腐草為螢」/円城塔、「大空の鷹」/祝佳音がよかった。
 梁清散の「破竹」は解説(紙が発明されず竹簡を使う世界線との行き来)を読んで、ああそういう話だったのか、と知る始末。
 名前だけ知っている十三不塔、立原透耶らの他作品も読んでみよう。

「汝ふたたび故郷へ帰れず」/飯島和一

 汝ふたたび故郷へ帰れず
 ◎
 タイトル作はボクシング小説の金字塔、と言われているらしいが全く知らなかった。が、その評判通り。ボクシングのテクニック描写が生き生きとしている。主人公はもちろん、登場人物のキャラ付けも全員魅力的(ワカダンナ、とか)。
 ちょっと朝稲日出夫の「あしたのジョーは死んだのか」を思い出した。
 もともと読みたかったのはマタギの「プロミスト・ランド」の方だったが、これも期待通り。
 「スピリチュアル・ペイン」静かな余韻が残る。

「変数人間」/フィリップ・K・ディック

 変数人間
 ◎
 「パーキー・パットの日々」は初見ではいまいちだったが、じっくり細部を想像しつつ再読してみたら悪くない気がしてきた。
 「不適応者」「超能力世界」「ペイチェック」「変数人間」いずれも良い。
 最高だと思ったのは、「猫の宇宙船」。

 ペイチェックは映画化されているが、未見。

「古代オリエント全史」/小林登志子

 古代オリエント全史
 ○
 全史だから仕方がないが、一つ一つの王朝の扱いが小さく、「長い歴史の物語」として楽しむことはできなかった。
 というよりも、オリエント全域にいろいろな王朝が入れ代わり立ち代わりで出現するせいでもあるが。
 なお、序章で「オリエント」の語源を取り上げているところは、「大世界史(1)」/三笠宮崇仁(文芸春秋社)の記述そっくりだった。