「そこにある山」/角幡唯介

 そこにある山
 ◎

 GPSはおのれと対象とを切断する。

 カーナビを使うと道を覚えない。同じようなことを北極圏の徒歩旅行で感じたという。過度にテクノロジーに依存していると周囲の状況と「関わり」を持つことができない。
 逆に、知覚センサーを研ぎ澄まして周囲の状況を観察すると、必要なランドマークが立ち上がり現前するようになる。
 この感覚は、慣れ親しんだ奥武蔵の山をトレイルランニングで走るときによく感じる。懸命に試走を重ねてルートを覚えた結果、何の変哲もない石や岩やヤブの形が、私には現在地を示す意味のあるものとなっている。なお、GPSウォッチは使用するがタイム計測用途であり、コースから外れた時のアラート機能は利用しないのが常だ。
 著者にとっては、この究極が地図なき山であろう。

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