「イラク水滸伝」/高野秀行

 イラク水滸伝
 ◎
 読みたかった本をやっと読んだ。
 イラクにはチグリス・ユーフラテス河下流に湿地帯があり、そこに住む人々は統治機構に組み込まれず暮らしてきたという。
 反体制派が水郷に集うところを「水滸伝」になぞらえている。
 高さ8mにおよぶという葦の群生は圧巻。これは確かに見通しがきかず、狭い水路に逃げ込めばよそ者は攻めることができないだろう。水滸伝の好漢の戦い方に合点がいった。
 人類文明発祥の地に近く、湿地民であるが故に太古からの伝統が生きているという面もありそうだ。
 マーシュアラブ布=アザールの起源を探るくだりなど、好奇心をそそられる。
 一般向けの読みやすい語り口でありながら、学術的にも価値の高い本と思えた。

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