月別アーカイブ: 2022年9月

「駒形丸事件」/秋田茂・細川道久

 駒形丸事件
 ◎
 全く知らない話だったので、興味深く読んだ。
 「イギリス帝国を構成する国の国民なら、誰でも帝国内を自由に移動できる」という国是はとても魅力的に思われるが、実際は有色人種に対して適用されなかったという看板倒れだったようだ。
 また、今では様々な国からの移民・難民の受け入れに積極的なカナダで、100年前の当時は移民排斥が世論の大勢だったことも意外である。
 駒形丸を雇ってインド人移民をカナダへと運んだグルディット・シンは、後年ガンジーの無抵抗・不服従運動の活動家になったという。この事件により強烈な人権・政治意識を持つようになったのだろう。
 

「逃亡者の社会学」/アリス・ゴッフマン

 逃亡者の社会学
 ◎
 白人女性である著者が、大学での社会学のフィールドワークとして、低所得の黒人街で暮らし、観察・分析を行った記録。
 学問・フィールドワークとして妥当かどうかはだいぶ議論が巻き起こったらしい。
 だが、読み物としては最高に面白い(異文化なので)。そして、著者自身が単なる観察者ではなく、黒人たちに共感して「ある行動」を共にしてしまうあたりは、成長する若者の青春物語でもあるのだろう。