倭の五王 – 王位継承と五世紀の東アジア (中公新書)
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聖徳太子よりも前の時代に、讃・珍・済・興・武と名乗る倭の支配者が、あいついで宋へ使者を送っていたという。卑弥呼のことが中国に知られていたくらいだから、もともと交流はあったはずだ。考えてみれば五世紀にも交流があるのは当たり前なのだが、改めて考えてみることがなかったため、全くそんな史実を認識していなかった。
その五王とは果たして誰(どの天皇)なのか?というのが、日本史分野の未解決問題のようだ。
本書はこれまでの諸説とは異なり、その考察にあたって中国・朝鮮側の史料を重視し、また当時の東アジアの国際関係を念頭に置いて検討すべきという立場である。まあ国産の記紀はほぼ神話だと思っているので、その態度に私は違和感を持たない。
日本史の研究者たちは記紀に慣れ親しんでいるがゆえに、そこが思考の出発点になる、という盲点があったのかもしれない。