「わたしの名は赤」/オルハン・パムク

 わたしの名は赤〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)
 わたしの名は赤〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)
 ◎
 トルコに行く飛行機の中で読もうと選んだ、ノーベル賞作家の本。
 殺人事件が起き、複数の登場人物による一人称語りで物語が進行する。細密画という技芸をめぐる、信仰と西洋文明のせめぎあいが、それぞれの語りから徐々に浮かび上がってくる。
 絵画に関して、写実を至上のものとするならば遠近法の採用は必然であろうし、日本画を含む平面的な様式美は単に写実的でない時代遅れな表現、としかとらえられない。しかし、絵画はあくまで物語の挿絵である、という立場ならば、様式にはそれなりの意味があるわけだ。マンガのコマ割り文法や記号類のように、読解するべきものとして見る必要があるようだ。新たな視点を得られた。
 物語としても面白いし、エキゾチックな舞台設定も楽しめる。
  

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