断片的なものの社会学
◎
市井の人々にインタビューするという調査手法で社会学研究を行う著者が、その活動の中で出会ったワンシーン、小さな出来事、印象的だが記録にも分析の俎上にも載らないものたち…を集めたエッセイ集。
味わい深い。
「『ありえない』をブームにするつながりの仕事術」/佐谷恭
「ありえない」をブームにするつながりの仕事術: 世界初パクチー料理専門店を連日満員にできた理由 (絶版新書)
◎
著者サイン本を入手。
コムラッズ、サハラマラソン、北極マラソンなど、超長距離を走ることから繋がった、世田谷・経堂の飲食店「パクチーハウス」のオーナーの自著(店舗はすでにない)。
タイトルだけだと何だかありがち・怪しげなビジネス自己啓発本・ノウハウ本みたいだが、中身はそんなことはない。これから社会に出る人、出て数年くらいの人には強くお勧めしたい。もちろん、それ以降の年代でも、好奇心が強く心の柔軟な人には十分響くだろう。
「岳飛伝(十四)撃撞の章」/北方謙三
岳飛伝 14 撃撞の章
◎
久しぶりに続きを読む。やはり心躍る。
史実では岳飛は30代で暗殺されているらしいが…。
「ウルトラマラソンマン」/ディーン・カーナゼス
ウルトラマラソン マン
◎
BORN TO RUN 走るために生まれた ―ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”では、商業主義的だとこき下ろされているウルトラランナーの自著。この本を読む限りは、チャリティで走っているし、そんなに商業主義の悪い人には思えない。
いつか出てみたいWestern States の情景がわりと細かく描かれていて、参考になる。
「アルケミスト」/パウロ・コエーリョ
アルケミスト (海外シリーズ)
◎
小学校高学年くらいから大人まで楽しめる寓話。
世界的ベストセラーだし、なんとなく噂では聞いていた本。知り合いが、何年か前に読んで人生が変わるきっかけとなった、ということらしいので読んでみた。
いろいろな捉え方ができる良書だと思う一方、宝物のありかを得るクライマックスは何かヨーロッパの昔話に似たようなものがあった気がする。とはいえ、そこにたどり着くまでの紆余曲折は十分楽しめた。
そして、いい歳してそこまで影響を受けることはないだろう、という事前の予想に反して、何か半生を振り返って考え込んでしまったのだった。
「究極の持久力」/鏑木毅
日常をポジティブに変える 究極の持久力
○
著者は私と同世代。マルコ・オルモが59歳でUTMBを制したという事実は興味深い。
「人口減少社会の未来学」/内田樹(編)
人口減少社会の未来学
◎
撤退戦が徹底して苦手ですよね、日本て。私は縮小均衡で全然いいと思っているんだけど。
池田清彦、井上智洋、平川克美、ブレイディみかこ、小田嶋隆の諸氏の論は面白かった。
隈研吾氏のはちょっと異質。
「地と模様を超えるもの」/趙治勲
地と模様を超えるもの―趙治勲の囲碁世界
○
なんで読もうと思ったのか?何かの記事で紹介されていたのだと思う。
何事であれ一流の人の考え方には学ぶところはあるが、囲碁のルールを全く知らない私には細部は難解であった。
「地」「模様」の意味するところ自体がよくわからないが、私の解釈では、石の並びが堅固な陣地なのか、戦略的には意味のない置き方になってしまっているか、という意味付けのようだ。著者の目指す棋風が「それを超えるもの」ということは、一見意味のない捨て石のようでも、後で効いてくることがあるとか、全体を大きくとらえると個々の石の並びにとらわれない方が良い、といった大局観みたいなものだろうか。
「朔と新」/いとうみく
朔と新
◎
「さくとあき」と読む。男二人兄弟の名前である。
兄の朔は交通事故で視力を失い、陸上の才能のある弟・新を伴走者にブラインドマラソンに挑戦する。
「伴走者」を検索したときに候補として表示され、評判の良い本だったので読んでみた。
著者は児童文学系の人のようで、確かに平易で読みやすい小説であるが、大人が読んでも鑑賞に耐える作品である(特に、次男の性格描写や親との関係などなど、二児の父としては身につまされる)。
朔とは月の逆行現象を指すもの、新とは新月すなわち「見えないもの」がこれから「見えるようになる」ことを表しているのかと思った。が、Wikipediaによるとちょっと違うらしい。いずれにしても、兄弟の名付け方にも、著者の考えが反映されストーリーを暗示しているように思う。
「マルクス哲学入門」/田上孝一
マルクス哲学入門
◎
マルクス主義でも、マルクス経済学でもなく、マルクスの「哲学」入門。
著作の原典から思想家としてのマルクスの基本的な考え方を導き出し、一般に流布している「社会主義は時代遅れの失敗、マルクスはその理論を作った人」といったイメージとの違いを指摘する。