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「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」/ターリ・シャーロット

 事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学
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 私たちの脳は、自分が元々持っている考えに合う意見しか受け入れないらしい。進化の過程で、過去の経験に反する新しい知見は受け入れない方が安全性が高く、そのようになったのだろう。全体として本書に書かれていることに納得はできる。ただし、下記の実験の解釈には異論がありうると思う。

 …ミリーとユアンは別の部屋に案内された。二人はそれぞれコンピュータに向かい、200軒ほどの不動産物件を見せられる。…そこで彼らは、各物件に100万ドル以上の価値があるのか、ないのかを答えなくてはならない。

 ミリーが100万ドル以上と判断し、2ポンドを賭ける。正解なら2ポンドがもらえるが、不正解なら2ポンドを失う。ミリーは掛け金を決めたあとに、ユアンの答えと賭け金を知ることができ、答えを変えることはできないが、賭け金を変えたり、賭けをやめることはできる。
 このルールのもと、ミリーは「ユアンが違う意見だと知っても何もしなかった」「ユアンが同意見だったときは賭け金を上げた」という結果だったという。すなわち、

自分の投資を支持する情報は重んじたが、自信を失わせる情報は軽視した。

 この推論は妥当だろうか? 少なくとも次のような可能性が考えられるだろう。
 不動産の価格というものは需給関係で決まる。つまり、多くの人が100万ドル以上の価値がある、と見積もる物件には、100万ドル以上の価値がある可能性が高い。何も情報がない段階で二人のうち二人とも価値を認めたのなら、その物件は実際に価値が高いと判断するのが妥当だ。従って、賭け金をあげてよい、という判断になる。二人の意見の一致を見なかったときには、その物件の価値を判断する指標は相変わらず自分の直感だけだ。従って、賭け金を変更する必要もない…。
 どうかな?