月別アーカイブ: 2019年8月

「サカナとヤクザ」/鈴木智彦

 サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う
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 著者はヤクザ物の雑誌記事を得意とする人らしい。そのへんは全く興味がないのだが。
 アワビ、ナマコ、カニ、ウナギ…漁業のダブルスタンダード、密漁といった業界の闇を丹念に体験取材して描かれている。日本の漁業において、どの魚種でも、暴力団の関与がないところなどなさそうに思えてくる。「暴力団」というくくり方もとらえ方の問題で、ボーダーラインは、構成員~荒っぽい漁師、といったグラデーションになっているんだろう。
 

「刑事弁護人」/亀石倫子+新田匡央

 刑事弁護人 (講談社現代新書)
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 警察権力は、犯罪捜査の大義名分のもとに、簡単に法を犯す。市民の権利、プライバシーを重視する法律家の訴えを、最高裁も全面的に支持した形。
 警察が個々の裁量で令状なしにGPSを取り付けて行動を監視することは、違法なのだ。
 犯罪実録物としても、法廷弁論物としても楽しめる。
 

「野村證券第2事業法人部」/横尾宣政

 野村證券第2事業法人部
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 内幕が描かれている迫真性で、書籍としては高く評価します。
 ただし、「証券会社の敏腕営業マン」(著者を含む)という人種に対しては、サイテーだな、という感想しか持てない。前半で描かれる著者の新人~中堅社員時代の営業方法は、当時法的にアウトではなかったとしても、まともな感覚の社会人がやるべき行動ではない。どれほど数字に強く、利益を生み出す商品開発ができたとしても、結局「知識のなさそうな老人狙い」「損を予測しつつも会社の指示で売りつける」といった競争で勝ち残れる人間を尊敬することなどできないだろう。
 一方、後半で描かれるオリンパス粉飾がらみの冤罪に関しては、理路整然と潔白を主張しており、この点は検察・裁判所の主張よりも信頼できそうだ。
 私が嫌うタイプの人間だからといって、無実の罪で有罪とされていいわけがない。しかしながら最高裁での逆転無罪はかなわなかったようだ。支援者はいるし、闘志は失っていないようだ。
 

「不死身の特攻兵」/鴻上尚史

 不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)
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 卑劣な上官。効果のない作戦。現場は生きて戦う方法を模索。決して本気の志願などしていない特攻兵。
 これだけの事実が明らかになっているのに、なぜいまだに特攻礼賛のような動きがあるのだろうか。不思議でならない。