月別アーカイブ: 2017年9月

「赤松小三郎ともう一つの明治維新」/関良基

 赤松小三郎ともう一つの明治維新――テロに葬られた立憲主義の夢
 ◎
 坂本龍馬の船中八策などよりも前に、立憲民主主義の提案を時の徳川政権に対して提出していたという、信州上田藩士・赤松小三郎。しかも、時代状況はその成立の実現性がかなり高かった(わずかな掛け違えで成立しなかった)、という論証。
 著者の同郷人としての赤松に対する思い入れがわかると同時に、少なくとももっと注目されてよい人物であろう、ということは納得できた。
 

長州レジームから日本を取り戻す

とか、

日本の明治維新研究者は、長い間「プロクルステスの寝台」を実践してきた。

(プロクルステスの寝台=ある学問分野において、正統派とみなされた学説が学会で固定されてしまい、修正することがタブーになってしまうという現象)等と書いてあるので、そこだけ読むと体制寄りの人は「ただのオカルト陰謀説じゃないか」と思いたいかもしれない。しかし、「何もかもが、明治維新のときの長州のせいだ」というのではなく、「何もかもが、明治維新以前に芽生えた立憲民主主義の民意をつぶしたせいだ」と考えれば、ある程度理解できるのではないか。
 

「偽りのサイクル」/ジュリエット・マカー+児島修

 偽りのサイクル 堕ちた英雄ランス・アームストロング
 ○
 スリリングな本でした。◎ではないのは、暴露本だからです。ランス・アームストロング側の立場での主張を読んでいない現時点で、公平な判断ができないと思うので。まあ、書いていることに事実と異なることはないのでしょうけど、母親のエキセントリックな性格とか、養父との確執をことさらクローズアップしているように感じたため、○としました。
 そうやってランスの人格を浮かび上がらせようというのはわかるが、適切だろうか?という疑問が残る、ということです。
 ちなみにドーピングに関して、私は今まで「やりたいなら自己責任だし、もちろんルール違反で失格だけど、むしろドーピング可とする大会があってもいいのでは」くらいに軽く考えていたが、考えを改めました。結構ドーピングによる事故、死者って出てるんだな…。
 自転車→トライアスロン→トレイルランニング、って結構近い関係にあるけど、トレラン界はどうなんだろうか?
 

「中央銀行が終わる日」/岩村充

 中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来 (新潮選書)
 ◎
 ビットコインの仕組みをはじめ、とにかく一般読者向けにわかりやすく「通貨の仕組み」が解説されている。
 経済学を学んだことがないので、いまいち納得しにくいのが「需要曲線」のグラフ。x軸に流通量、y軸に価値(価格)を取った平面に、「需要」(右下がり)と「供給」(右上がり)の曲線を描いてしまうところ自体が、ちょっとピンとこない。
 別の方向から調べよう。
 

「古道」/藤森栄一

 古道―古代日本人がたどったかもしかみちをさぐる (講談社学術文庫)
 ◎
 在野の考古学者による、古代日本人の移動の足跡をたどる旅。地図を見ながら、本当に歩いてたどってみたくなる。第三章「ルング・ワンダルング」と同じような道迷いを、ちょうど土日の山行で体験してしまった。
 「かもしかみち」も読んでみたい。
 

「ラオスにいったい何があるというんですか?」/村上春樹

 ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集
 ○
 村上春樹の文体が鼻につく、という人もいるかもしれない、オシャレな紀行文集。ラオス自体はほんの一部(書くための旅行で訪れたようだ)。
 著者が以前住んでいたという欧米各都市(ボストンとか)への再訪は、ある種の感傷を抱かせる。