月別アーカイブ: 2015年11月

「A3」/森達也

 A3【エー・スリー】
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 明らかに拘禁反応が出ていて精神病が疑われる人物を、一方的に裁判に参加させることが正義なのか? 根本的な正義/不正義の問題以前に、刑事訴訟法に反する。司法は法を守らなければダメであろう。
 これに比べると、菊池直子被告が東京高裁で無罪判決となったのは冷静。
 

「一神教と国家」/内田樹・中田考

 一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)
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 国民国家の限界を認識している二人の対談。中田氏は、イスラム世界が分断されている状況を解消するために、領土にとらわれず世界共通の「カリフ」をいただくほうが有効であろう、とのこと。内田氏は、事実上国民国家制しか現状ないので、もう少しこの制度をうまく使ってしのごう、と。
 

「『自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか』と叫ぶ人に訊きたい」/森達也

 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい―――正義という共同幻想がもたらす本当の危機
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 表題になっている節については、こう思う。被害者が誰であれ、命を奪う行為の罪の重さは同じであるべきだ(死刑制度は被害者遺族感情のためにあるのではない)。法律上。
 ダイヤモンド社の「リアル共同幻想論」をまとめた本。「不安と恐怖に煽られて歯をむき出す犬に石を投げつけてどうする」「元皇軍兵士の証言 日本軍は中国で何をしたのか」が印象に残った。
 

「殺人犯はそこにいる」/清水潔

 殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件
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 足利事件は単なる冤罪事件ではなかった。本来は連続幼女誘拐殺人事件として、「真犯人」の捜査を進めるべきものだったのに。
 目星をつけてから、有罪を立証する方向の自白・証拠だけを集める見込み捜査、「科学的」と称する手法の威信を守ろうとする組織防衛。
 さらに、死刑が執行されてしまった「飯塚事件」、これも冤罪であった可能性はかなり高い。私たちは、無実の人間を簡単に処刑する社会に生きている――このことを肝に銘じたい。多くの人に読んでほしい一冊だ。