日別アーカイブ: 2015年10月2日

「石の虚塔」/上原善広

 石の虚塔―発見と捏造、考古学に憑かれた男たち―
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 2000年の石器捏造事件のドキュメンタリー…というには、あまりにも深く、考古学界の歴史と人物の奥へ迫った傑作。
 戦後から考古学が一般にもブームになり、学界もアマチュアの発見を利用してきたという、ある意味共犯関係があったようだ。そして、「著名なアマチュア考古学マニア」となった人物は、学閥争いにも巻き込まれていく。
 こういったアマチュアのヒーローが、捏造事件の鋳型になってしまったのかもしれない。
 

「ポピュリズムを考える」/吉田徹

 ポピュリズムを考える 民主主義への再入門 NHKブックス
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 「ポピュリズム」を、大衆迎合・人気とりといった批判ではなく、その構造や意味をしっかり考え直す論。そもそも民主主義では、主権者の主張を受けて政治を行うこと自体は当然ではないのか?など。
 ある意味、ポピュリズムを抽象化して論じているので、現実に対しての著者の主張は感じ取りにくい。学問的に考察すること、が現実に対する態度なのかもしれないけど。