「森の回廊」/吉田敏浩

 森の回廊―ビルマ辺境民族開放区の1300日
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 ビルマの少数民族ゲリラとともに、三年半にわたって森を巡った記録。
 従軍記者のような位置付けでありながら、戦闘の描写は少ない。しかし、著者が実際に巻き込まれた戦闘(というか、ビルマ国軍による一方的な爆撃)では、本気の危機一髪、危うく死ぬところという緊迫感。
 ともかく、文化・民俗・自然観察の描写が繊細、精緻で価値のある記録。
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「トルコのもう一つの顔」/小島剛一

 トルコのもう一つの顔 (中公新書)
 ◎
 四半世紀前、中東の旅先で出会った日本人からトルコについてすごくいい本がある、と紹介されたのがこれだ。たぶん。
 彼が言い間違えたか私が聞き間違えたか、「もう一つのトルコ」だとばかり思っていたので、帰国後、何度か図書館などで探したが見当たらず、あきらめていた。
 この度、クルドの地に旅をした若い友人たちのネット上からの情報で、正しい書名を知る。
 深い知性に裏打ちされた、軽妙な文体。民族浄化など重いテーマも背後にあるのだが、紀行文として読んでも十分面白い。これは著者の自由な生き方がそのままにじみ出ているのだろう。
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「極限力」/山本晃市

 極限力 ~Beyond Self~
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 山岳ランニング界の超人たちが語る、「ゾーンへの入り方」。16人が同じことを言っているようで、それぞれ違うことを言っているような気もする。ちなみに16人のうち、次の方たちは直接見かけたことがあります。

  • 横山峰弘氏:2018年上州武尊山スカイビュートレイルのブリーフィングにて
  • 松本大氏:2017年スパトレイルのブリーフィング、レース中のエイドにて
  • 渡邊千春氏:2017年峨山道トレイルランのゴールにて
  • 奥宮俊祐氏:2017年FTRのレース前、およびレース後の現場検証登山にて
  • 石川弘樹氏:2018年奥三河パワートレイルのレース中のエイド、ゴールにて

 結局、限界を超える方法みたいなものは人それぞれなので多少参考になるかならないか、といったところだろう。
 それよりも、日本のトレイルランニングの名勝負の数々が記されているところが良かった。付録の「日本アウトドア・ランニング ショートヒストリー」もよい。
 

「スウィングしなけりゃ意味がない」/佐藤亜紀

 スウィングしなけりゃ意味がない
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 久しぶりの読書、一気読み。
 第二次大戦、ナチス政権下のドイツで、JAZZとアメリカ文化に興じる上流階級の御曹司たちがいたという。私は御曹司ではない(経済的にも、年齢的にも)が、彼らが「おバカの帝国」と自国を罵りたい気分には完全に同調した。主人公=語り手の両親の最期の迎え方には、ちょっと羨望を抱くぐらいだ。
 この本、英訳・ドイツ語訳したら結構売れるんじゃないだろうか。

「空と山のあいだ」/田澤拓也

 空と山のあいだ―岩木山遭難・大館鳳鳴高生の五日間
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 昭和39年1月、秋田県の高校山岳部員5人の青森県の岩木山における遭難事故を追ったドキュメンタリー。独立峰での遭難であるにもかかわらず、なぜか5日間も発見に至らなかった。そこには遭難者、捜索側双方の勘違い・思い込みがあったようだ。もっとも、遭難というのは道迷いなど勘違い・思い込みに端を発することも多いので、ひとたび遭難発生した後は、捜索側の責任が重視されるだろう。
 当時は登山ブームであったが、警察の救助体制は全く整っておらず、山に関しては素人同然だったようだ。
 

「ケトン体が人類を救う」/宗田哲男

 ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~ (光文社新書)
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 糖質制限をすすめる著者は異色の経歴を持つ医師。産婦人科で妊娠糖尿病の対応に糖質制限が有効だという。
 臨床・治療での実績はもちろんすごいことなんだが、糖尿病学会などの薬漬け医療を疑わない既存勢力に対して、正面から立ち向かっているところもすごい。本書を読む限りでは、完全に既存勢力を論破できているようだ。
 著者は別だが、こちらの本とセットで読むと理解が深まる。