羆吼ゆる山
◎
描写が詳細でリアルなだけでなく、文章がうまい。失礼ながら、半生を北海道の山でワイルドに過ごした方の文章とは思えないほど見事だった。
読みやすく面白い。そして昭和初期の北海道の貴重な記録である。
「サはサイエンスのサ」/鹿野司
サはサイエンスのサ
著者の没後に刊行された完全版。表題はブラッドベリ作品のオマージュだろう。
もとはSFマガジンに連載されていたわけだが、私が雑誌を読んでいた時期とはかぶっておらず、読んだ記憶はない。
読みやすい口語体で科学や社会のあれこれを語るエッセイ集。手元に置いておき、寝る前に一編ずつ読むのに適している。
「地球のはしからはしまで走って考えたこと」/北田雄夫
地球のはしからはしまで走って考えたこと
○
レース出場のための前泊中の時間つぶし用。こういう前向きなものが良い。
動画の見られるQRコード入りだった。
「もののあはれ」/ケン・リュウ
「マイノリティ・リポート」/フィリップ・K・ディック
マイノリティ・リポート
◎
表題作は映画とは結構筋が違う。根幹のアイディア(プレコグによる犯罪予知とその齟齬)をもとに組み立て直した感じだろう。
「追憶売ります」こちらはトータル・リコールの原作だが、これも映画とはだいぶ異なる。
「スポーツウォッシング」/西村章
スポーツウォッシング なぜ〈勇気と感動〉は利用されるのか
◎
第九章、山口香さんへのインタビューが素晴らしい。
「エンハンストゲームズ」の捉え方も聞いてみたい。
「幼年期の終わり」/アーサー・C・クラーク
幼年期の終わり
◎
1953年に書かれた、「人類が宇宙に進出する直前」に来訪宇宙人により支配される話。
巨大宇宙船が大都市の上空を覆う描写はインデペンデンス・デイのイメージの源泉か。
「紙の動物園」/ケン・リュウ
紙の動物園
◎
初読。短編集。
悲しい話が多いけど、これは傑作。評判になるのも納得。
著者本人も触れていたが、「愛のアルゴリズム」は確かにテッド・チャンの雰囲気がある。あと「結縄」も。
「アルテミス」/アンディ・ウィアー
「長安ラッパー李白」/大恵和美(編)
長安ラッパー李白
◎
唐代を舞台としたSF短編集。
表題作は中国語からの翻訳に感心。
「腐草為螢」/円城塔、「大空の鷹」/祝佳音がよかった。
梁清散の「破竹」は解説(紙が発明されず竹簡を使う世界線との行き来)を読んで、ああそういう話だったのか、と知る始末。
名前だけ知っている十三不塔、立原透耶らの他作品も読んでみよう。